2019年4月10日水曜日

「目星」は目で見るものか?

始まり

こんなツイートがあった。



6版の「目星」は原語だとSpot Hiddenで、邦訳を見るとなんとなく目で見て気づくもののイメージがある。でも本当にそうだろうか?

本文をチェック

6版原語版をチェックすると、
This skill allows the user to spot a secret door or compartment,
notice a hidden intruder, find an inconspicuous clue,
recognize a repainted automobile, become aware of ambushers,
notice a bulging pocket, or anything similar. This is an important
skill in the game. (P74)
7版では、
 This skill allows the user to spot a secret door or compartment,
notice a hidden intruder, find an inconspicuous clue,
recognize a repainted automobile, become aware of ambushers,
notice a bulging pocket, or anything similar. This is an important
skill in the armory of an investigator. (P76)

で、指している事柄はほとんど変わらない。明らかでない証拠を発見したり、隠れている人に気づいたりとは書かれているが、明確に「目で見たもの」とは書かれていないようだ。この辺りは旧版新版で変化はない。となると怪しいのは日本語訳の方だ。エンターブレイン版を見ると、

 この技能を使えば、秘密のドアや小部屋を見つけたり、隠れている侵入者に気がついたり、人目につかない手がかりを見つけたり、…(後略、P84)
とあり、spotやfindが「見つける」という訳になっている。ここと「目星」という語感から、「目で見て見つける」ようなイメージがついたのかもしれない。

ではspot、findはどういう意味で書かれているのだろう?手元のOxfordで調べると、

Find
1. discover by chance or by searching. (偶然に、あるいは探して発見する)
2. recognize or discover to be present or to be the case. (存在しているものや事柄を認識する、あるいは発見する)
Spot
1. notice or recognize someone or something that is difficult to find or that you are searching for. (見つけたり探し当てるのが難しい人やものに気づく、あるいは認識する)
(訳はあんのん)
となっていた。ネットでも調べてみると、Findは一般的な意味の「探し当てる、見つける」。Spotは「たくさん物があったりして分かりづらい中から一つ特定のものを探し当てる」イメージのようだ。これらの語には特に「目で見て」という要素はないので、例えば「いろいろな匂いのする料理から血の匂いを嗅ぎ分ける」のもSpotと言えるかもしれない。同義語で検索すると"detect"や"distinguish"が出てくるあたり、おそらく正解に近いだろう。

結論

日本語訳がイケてない。

ちなみに


このツイートに応募されていた「看破」が個人的に気に入った。「見やぶる」でもいいかもしれないけど目星の目視感から脱却できてないのがアレ。


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