2020年10月11日日曜日

DEX (dexterity)は「器用さ」?それとも「敏捷性」?

Call of Cuthulhuをはじめ、多くのTRPGにはキャラクターの能力を示す値がある。その中に、よくDEX (dexterity)という値があったりする。この単語は普通「器用さ」と訳されることが多いが、CoCでは「敏捷性」と似たニュアンスで捉えられていることに気づいた。一方で、DEXを「器用さ」としているところは、素早さの指標としてAGI (agility)を使っていたりする。

DEXを素早さの指標として使うのは意味的に正しいのか? この扱いはCoCだけなのか?
同じようなことを考えておられる方もいたが、今後の翻訳のために、簡単にまとめてみたい。

そもそもdexterityとは

まずは語義について確認。Oxford dictionaryによると、dexterityの意味は 
skill in using your hands or your mind
となっている。日本語だと「自らの手や頭を使った能力」ということで、自分の身体や、頭脳を用いて、何かをうまく行うことに大して広く当てはまる言葉だということがわかる。だから、剣や銃を上手く扱うのもdexterityが高いと言えるし、素早く走るのもdexterityがあると言える。そういう意味ではとても広い範囲の行為が当てはまる言葉だ。そういう意味で、CoCでDEXを素早さとして扱うのは語義的に間違いとまでは言えない(まあアメリカ発のシステムでそういう間違いはないと思うけど)。

CoCでの扱い

CoC 7thでは下のように記載がある(原著P31)。
Investigators with higher Dexterity scores are quicker, nimbler and more physically flexible. 
身体の俊敏さや可動性に焦点を当てていて、完全に素早さとして扱われている。CoCの場合は、具体的行為の器用さ的指標として技能値があり、これが他TRPGのdexterityの使い方とかぶるので、DEXが素早さ的指標として扱われているのかもしれない。
他方、素早さの指標としてagilityを用意してしまうと、DEXからその要素は取り除かれて、完全に器用さの指標として扱われるのだろう。他のTRPGの運用がまさにそれだ。

他TRPGでは

Delta greenなどのCoCの系譜に属するシステムはDEX = 素早さのことが多い様子。これはさらにD&Dまで遡れる(らしいが、やったことない)。D&Dの場合は、素早さだけではなく身体的技能全体にDEXが影響するようなので、それはまさしくdexterityの語義を反映していると言える。

日本のTRPGシステムを見てみると、例えばソード・ワールドなんかは器用度と敏捷度は独立して存在しており、器用度は隠蔽判定や命中力判定に影響する一方で、敏捷度は先制判定や回避力判定に影響する。ここでは器用度は完全に身体をうまく使えるかという指標になっていて、素早さ要素はない。
ログ・ホライゾンTRPGはDEXのみがあるが、こちらは器用さとして扱っているようだ。その他のシステムもざっと見てみたが、意外にDEXやAGIに相当するものを数値として扱っていない(少なくともこの言葉を使っていない)ことに気づいた(ダブルクロスやサタスペなど)。DEXというのは、D&Dから始まる伝統的TRPGステータスの名残のようなものなのかもしれない。

まとめ
  • Dexterityは広く身体の動作性を示していて、CoCの素早さ的扱いは語義的に正しい
  • もとを辿ればD&Dのステータス(らしい)
  • 思ったよりDEXを持つTRPGが少なかった(まあ知ってるシステムそのものが少ないというのはある)。今後もどういう風に能力を数値化するかという試行錯誤は続いていくのだろう。
ということを原稿ほっぽり出して新幹線車内でぼんやり想いにふけっていたのでした。

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