はじめに
そこで、今回は「「失敗」と「ファンブル」が出たとき」に注目して、どのような処理を行うのが良さそうか、今後の確率計算のために検討したい。
まとめ
両方とも失敗した時は「おそらく」振り直しとするか引き分け(あるいは双方失敗として処理)にしといた方が確率的に無難。あとはダイスを振る時間との兼ね合いになると思われる。
対抗ロールの要件
まずは対抗ロールのやり方について復習する。対抗ロールは日本語版ルールブックP87に記載がある。
- 2人(PC同士、あるいはPCとNPC)で適当な能力値を提示し、それを基準に1d100ロールを行う。
- お互いの成功度を比較する。
- 成功度はクリティカル>エクストリーム>ハード>レギュラー>失敗、ファンブルの順に高い。
- 成功度が高い方が対抗ロールに勝つ。
成功度が引き分けだった場合は能力値が高い方が勝利する。能力値も同じだった場合の処理は色々あるが、ここでは確率をきちんと求める都合上「決着がつくまで振り直し」としたい。
ここで、「失敗」と「ファンブル」が出たときの記載はルールブックにはない。単に成功度を比較するという文面では「失敗」が出た方がロールに勝つとも読み取れる。実は前回の記事はここで失敗側がロールに勝利する設定になっている。この条件の処理はKPによって変わってくると思うが、どのようにすべきなのだろうか。これが今回の疑問点である。
成功度と確率
各成功度は能力値を $s$ とすると次のような確率に従う。
- クリティカル: $P(Critical) = \dfrac{1}{100}$
- エクストリーム: $P(Extream) =\dfrac{\lfloor \dfrac{s}{5} \rfloor - 1}{100}$
- ハード: $P(Hard) =\dfrac{\lfloor \dfrac{s}{2} \rfloor - \lfloor \dfrac{s}{5} \rfloor}{100}$
- レギュラー: $P(Regular) =\dfrac{s - \lfloor \dfrac{s}{2} \rfloor}{100}$
- 失敗: $P(Fail) = 1 - \dfrac{s}{100} - P(Fumble)$
- ファンブル$P(Fumble) = \cases{\dfrac{1}{100} & \text{if } s \ge 50 \cr \dfrac{5}{100} & \text{if } s \lt 50}$
これらをそれぞれ(ノン)プレイヤーA, Bの能力値 $s_A$, $s_B$ について計算し、成功度の組み合わせ全ての確率を求めればいい……と式で書いても分かりにくい。ここで成功度に立ち戻って、Aの成功率を考えたときにどの成功度なら勝利するか考えてみよう。
A, Bそれぞれの成功度と、どちらが勝利するかの組み合わせは次のようになる。
|
|
Aの成功度 |
|
|
ファンブル |
失敗 |
レギュラー |
ハード |
エクストリーム |
クリティカル |
| Bの成功度 |
ファンブル |
? |
A? |
A |
A |
A |
A |
| 失敗 |
B? |
? |
A |
A |
A |
A |
| レギュラー |
B |
B |
? |
A |
A |
A |
| ハード |
B |
B |
B |
? |
A |
A |
| エクストリーム |
B |
B |
B |
B |
? |
A |
| クリティカル |
B |
B |
B |
B |
B |
? |
AとあるのはAが勝利する組み合わせ、BとあるのはBが勝利する組み合わせで、?は成功度が等しいため能力値で勝敗が決まる。
ここで、「失敗」対「ファンブル」について、単に成功度が高い方が勝利、という単純な案を考えてみよう。
例として、$s_A = 45$, $s_B = 55$ の時の成功率について考えてみる。各マスの確率は次のようになる。
|
|
|
Aの成功度 (能力値45) |
|
|
|
ファンブル |
失敗 |
レギュラー |
ハード |
エクストリーム |
クリティカル |
|
|
確率 |
5/100 |
50/100 |
23/100 |
13/100 |
8/100 |
1/100 |
Bの成功度 (能力値55) |
ファンブル |
1/100 |
5/10000 |
50/10000 |
23/10000 |
13/10000 |
8/10000 |
1/10000 |
| 失敗 |
44/100 |
220/10000 |
2200/10000 |
1012/10000 |
572/10000 |
352/10000 |
44/10000 |
| レギュラー |
28/100 |
140/10000 |
1400/10000 |
644/10000 |
364/10000 |
224/10000 |
28/10000 |
| ハード |
16/100 |
80/10000 |
800/10000 |
368/10000 |
208/10000 |
128/10000 |
16/10000 |
| エクストリーム |
10/100 |
50/10000 |
500/10000 |
230/10000 |
130/10000 |
80/10000 |
10/10000 |
| クリティカル |
1/100 |
5/10000 |
50/10000 |
23/10000 |
13/10000 |
8/10000 |
1/10000 |
成功度が同じ場合、Bの能力値の方が高いのでBの勝利となる。そのため能力値は10のみの差でも、確率に大きな違いが生じる。
Aが成功する確率は $P(A) = 0.2845$、Bが成功する確率は$P(B) = 0.7155$で、約44%の差がある。このうち「失敗」と「ファンブル」の組み合わせは0.2475で、うち0.2425がBの勝利という判定になる。
ここで、例えば「『失敗』『ファンブル』の組み合わせは振り直し」とすると、1回目の対抗ロールで勝利する確率は、それぞれ$P(A) = 0.2795$、Bが成功する確率は$P(B) = 0.4730$となり、先ほどの大きな確率の差がだいぶん緩和された。残りの確率0.2475で振り直しとなる。
2回目以降の対抗ロールも同様な確率で推移すると仮定すると、無限等比数列の極限を考えれば、最終的な確率は$P(A) = \dfrac{0.2795}{1-0.2475} = 0.3714$、$P(B) = \dfrac{0.4730}{1-0.2475} = 0.6286$となる。このような処理にすると成功率の差はおよそ36%となり、先ほどよりやや緩和された。
この「失敗時もあくまで成功度に従って判断」と「両失敗時は振り直し」というキーパリングの差は、お互いの能力値が低いほど顕著になっていく。例えば、極端に$s_A = 1$, $s_B = 2$という組み合わせを考えると、両方とも失敗あるいはファンブルする確率は 0.9702とほぼ100%近いのにもかかわらず、Bの方が能力値が高いため、$P(A) = 0.0569$、$P(B) = 0.9431$となってしまう。一方で、失敗時振り直しとすると$P(A) = \dfrac{0.0099}{1-0.9702} = 0.3322$、$P(B) = \dfrac{0.0199}{1-0.9702} = 0.6678$となり、能力値の比と確率の比が近くなる。
以上のことから、「お互い失敗時は引き分けとするか振り直し」とするのが良さそうだと結論した。ただ、振り直しすると能力値によっては試行回数が嵩む時があるので、その辺りを注意して柔軟に対応していった方が良さそうだ。